2026.03.03 00:00
コラム
第10節マッチレポート
「皆が同じラグビーを見られた」(松田力也)
トヨタヴェルブリッツは3月1日、リーグワン第10節で三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)と、たけびしスタジアム京都で対戦。31-29で競り勝って3勝目を挙げた。POMは3トライをスコアしたWTB髙橋汰地が選ばれた。
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取って取られて、取られて取って。リードが九転するシーソーゲームをヴェルブリッツが最後の2分間で制した。前節のBL東京戦のような、相手をスマッシュする白星ではない。無骨な勝利。会見でスティーブ・ハンセンHCは「2~3年前のチームなら負けていた試合」と評した。入りでもたつき、ミスから失点、反則で勢いは思うように出なかった。これまでの敗戦の原因が揃っていた中で、勝利を手繰り寄せたことに意味がある。
相模原DBには昨季連敗。ビジターゲームでは、前半で6トライを許した相手(最終スコアは40-44)。この日も中盤でのフィジカルバトルでヴェルブリッツの反則から、迷わずタッチキック。ゴール前のラインアウトモール起点にトライと、戦術に迷いはなかった。ヴェルブリッツもFWが相手ゴール前で攻撃を畳みかけ、WTB髙橋汰地がトライと、BKでフィニッシュ。主導権は双方を慌ただしく行き交った。31-29はコンバージョン1本分の差だ。
終盤に勝負の綾があった。
後半36分、24-29と5点を追いかける中、ヴェルブリッツがドロップアウトでのスタート。姫野和樹キャプテンは当初スクラムを選択しようとしたが、交代出場していたFLアイザイア・マプスアが直前のプレーで負傷。ベンチには代わる選手がいない状況だった。
「7人でスクラムを組むのはリスキーかなと。真也(小村)と話し合って、ショートキックで隙を見て、となった」(姫野)
22㍍からのドロップキックを選択。小村からスタートしたアタックは2分近く、10フェイズ繋ぎ、最後はCTBシオサイア・フィフィタが相手を跳ね飛ばしてインゴールへ。これで同点。難しい角度のコンバージョンを小村が慎重に沈め、試合をひっくり返した。残り時間は1分強。今度は守りが問われる番だ。
「とりあえず敵陣に蹴って、キックチェイスから自分たちのディフェンスを信じて守り切ろうと。あれは僕らにとってのメンタルチャレンジ」(姫野)
相手も2分近く攻め続けたが、ヴェルブリッツも反則せずに止め続け、最後は相手がノックフォワード。待望の3勝目を挙げた。
敵将のグレン・ディレーニーHCは日本語で「最後の2分、一番大事。その前まではいい試合だったけど。我々のプレー、DNA、最後の最後、ちょっと残念」
元ヴェルブリッツのFL吉田杏主将も「最後の2分、スイッチオフしてしまった。それが接戦で勝ちを得られるか得られないかの違い。小さな部分ですけど、大きな結果になると改めて痛感しました」
両者のコメントは他人事には聞こえない。まさに紙一重の差。だが苦しみながらも、最後まで接戦に持ち込めたのには理由があった。
トライ数はヴェルブリッツ4、相手が5。難しい角度のコンバージョンとPGを松田と小村が全て決めた。スクラムも前節に続いて優位に立った。前半20分のWTB髙橋汰地の1本目のトライは、相手ゴール前スクラムから愚直にFWがピック&ゴーで圧力をかけ続けた末に生まれた。左PR三浦昌悟は「ミスが続く中、スクラムで自分たちに波が持ってこれるようになったのは成長」と振り返った。今季、右PRハムダン・トゥイプロトゥが加入。「ヴェルブリッツが組みたいスクラムにマッチしている」と三浦。姫野キャプテンはスクラム安定の原因を「キックを使いながら敵陣に入ることで、エナジーがセーブ出来ている」。ハンセンHCは「ジムでの努力、上野隆太アシスタントコーチのテクニックも生きている」とした。様々な要因が重なって、スクラムの安定をもたらした。
もう一つはフィニッシャーの活躍。小村だけでなく、WTB和田悠一郎は、フィフィタが決めた一連のトライの中で、タッチライン際を力強くゲインした。SH茂野海人も激しいボール争奪戦の「きわ」で精確にパスを捌き続けた。言い尽くされた表現ではあるが、「一つのボールを全員で繋いだ」トライだった。
会見で、チームが息を吹き返した原因を聞かれた姫野キャプテンは「団結力が生まれたことと、ゲームプランが明確になったこと」と答えた。
地元京都で「トップリーグ2年目以来」の試合となった松田力也は「流れ自体は悪かったが、皆が同じラグビーを見られた」
会見では姫野キャプテンも「同じ絵を見ることが出来た」と同様のコメント。それは長い間、待ち望んでいたフレーズだ。
「勝って反省できるのがこんなに素晴らしいことなのかなと」(姫野)
2日前のミライマッチと、この日の円陣で姫野キャプテンは「いまは高い山を登っている最中」と仲間に声をかけた。2季ぶりの連勝も、まだまだ山の登り口。バイウイークを挟んで、一歩一歩、足取りを確かなものにしていく。(森本優子)


4試合連続メンバー入りしたWTB和田悠一郎

タックルされても絶対に倒れない。マンバことWTBマーク・テレア

終了直前、執念のディフェンスを見せるFL青木恵斗とCTBニコラス・マクカラン