2025.12.15 13:15
コラム

姫野
第1節マッチレポート
「フィジカルのバトルで逃げなかった」(NO8姫野和樹)
トヨタヴェルブリッツは12月13日、リーグワン2025-26開幕戦で豊田スタジアムで三重ホンダヒート(三重H)と対戦。44-33で下し、白星スタートを切った。豊田スタジアムで勝利を収めたのは2022-23シーズン開幕戦で静岡ブルーレヴズに31-26で勝利して以来、3季ぶり。
●
来年5月まで続くリーグ戦18試合の中の1勝も、選手やスタッフ、VOLTsにとって、それ以上に重みのある勝利だった。
「トヨタらしさを取り戻す」
今季のスタートから、そう口にしていた姫野和樹キャプテン。昨季10位に終わった反省からだ。キャプテン続投も、自分が最もトヨタらしさを伝えられる人間だと決意したから。試合の口火を切ったのも、その背番号8だった。
前半5分、ゴール前、相手ボールのラインアウトをLOピーターステフ・デュトイがスチール。FWが粘り強くフェイズを重ねて姫野が左中間に飛び込んだ。
前半、ヴェルブリッツが主導権を握る起点となったのはラインアウト。開始2分、自陣ゴールを背にしての相手ボールラインアウトをLOジョシュ・ディクソンがキャッチ、ピンチを脱した。姫野のトライのきっかけも同様のラインアウト。勝利の陰の立役者となった。
前半で3トライを奪い、23-12で迎えた後半。出だしで三重Hのフィジカルに受けに回り、続けて2トライを献上。23-26と追う立場に。昨季はそこで流れを奪い返せないことも多かったが、この日は円陣で姫野がこう声をかけた。
「パッシブ(受け身)になるな、自分たちから奪いにいかないと」
直後のキックオフから3分間、攻撃を継続。一人ひとりが少しずつ前に出ながらフェイズを重ね、最後はLOデュトイからのオフロードパスを受けたSO松田力也がトライ。逆転された直後のプレーで再逆転した。コンバージョンも決まり、30-26とリードを奪い返した。
「我慢の時間帯が多かったけど、あれは僕じゃなくても誰かがトライしてた」(松田)
昨季第9節、2月の神戸S戦で大けがを負っての復帰戦。コンバージョンも最初の2本は「久しぶりの公式戦で緊張しました(笑)」と外したものの、その後はきっちりと修正、ベテランの経験値を見せつけた。
「トヨタらしさは姫野が出してくれるので、僕は彼の目の届かないところをしっかりとオーガナイズしていく」(松田)
会見でスティーブ・ハンセンHCは「松田は見た目より強靭になり、スピードも上がった。フォスター(共同コーチ)といい時間を過ごして、ラグビーIQも高まっている。これからもっと良くなる」と太鼓判を押した。
姫野キャプテンは初戦で評価できた点を「トヨタらしさを出せたところ」と振り返った。
「フィジカルのバトルで逃げなかった。やってて楽しかった」
姫野自身、80分間、先頭に立ち仲間を鼓舞し続けた。ブレイクダウンでの働きも出色で、初戦のPOMも当然の選出だ。
今季がルーキーイヤーとなるFL青木恵斗も、「自分は来たばかりなので、まだトヨタらしさは分からないけど、姫野さんが“コンタクトで勝つチーム”だと。それは僕にも合ってる」
昨季はアーリーエントリーで9試合に出た青木。当時は120㌔あった体重を、プレシーズンで8㌔絞り込んだ。「めっちゃ身体が動くようになりました」。後半27分のトライは、それを体現していた。こちらも20フェイズ近くを重ね、最後は青木が2人がかりのタックルを振りほどいてトライを決めた。相手をつきはなす貴重な1本だった。
「去年だったら、あの場面でトライはとれてない」(青木)
ミスなくフェイズを重ねるアタック、ゴール前での粘りのディフェンス。「プレシーズンにやってきたことが出た」とハンセンHC。
初戦の壁は超えたが、これからは上位との対戦だ。
「まだスタートしたばかり。謙虚に、また月曜からいい準備を心掛ける」(姫野キャプテン)
チームの合言葉は「トヨタらしさを取り戻す」。取り戻した先のゴールは明らかだ。選手・スタッフが一丸となった長い旅が始まった。 (森本優子)

後半27分、FL青木恵斗がトライを挙げる

この日1トライ4G、2PGで19点を挙げたSO松田力也